〜その二〜 |
キョンくんと洋子と別れ、待ち合わせ場所へ。
時間を確認したら一時間早く着いてた。これはどういう意味だろうか。暗号かもしれない。
念のために、ケータイでケーキ屋の住所を出す。
うむ、この辺りだ……。
ケーキ。お腹すいた。ご飯は食べたと思う。ケーキ。いかん、翔くんを待たねば。ケーキ。待ち合わせは何時だったかね。ケーキ。そういや服を見ようかと思っていた。ケーキ。アインシュタインの相対性理論を打ち破ればタイムトラベルも夢ではないらしいが、私はケーキのほうが大事だ。ケーキ。
「…………」
ええい、翔くんはまだか!!
時刻確認! 約束の時間まであと五十五分!!
キエエエエエエエエエエエええええええいいいいいいいいいいいいいいいいい!! と叫ばないだけの理性くらいはあるのだ。弥生さんを舐めてもらっては困る。実際舐められても困りますよ。それは皐月とリュックの特権だ。お金に換算すると、一番有名なパソコンのOSを出している会社の社長の年収くらいだ。具体的な数字は判らない。
「そうか、早く着き過ぎたのか……」
事実を小声で口にした。しかしそれで時間が早まるわけではない。アインシュタインによれば楽しい時間はあっという間だけど、逆に辛い、苦しい時間は長く感じるそうだ。つまりそういうことだ。
先に服を見るか? いやしかしそれではケーキの鮮度が落ちてしまう!
?
我ながらさっぱり意味が判りませんな。
「うむ」
腕を組んで仁王立ち。
考える。
下見は必要だと思う。店を見つけられないなんて話にならないし、もしお休みでも目も当てられない。確認すべき。
私はケータイに住所を再度確認して、走り出した。
食欲は何者にも勝る。きっと洋子にも勝てる。そんなものがなくとも結構勝っている。勝利条件は……私の心次第だ! あ、洋子とばっか喧嘩してるように見えるけど、ちゃんとキョンくんとも殴り合いしてるよ。ただ、最近になってこっちの戦いは体格的に不平等なので平和的にオセロとかポーカーになっている。弥生さんは実は平和主義なのだ。
あっさりとケーキ屋さんを見つけた。大丈夫、営業している。小さい店だ。五人も入ったら窮屈になりそう。あ、奥にテーブルとイスがある。けど一組だ。狭いなー。
私は店に入らず、店内をじーっと見つめた。穴が開くほど見てやった。実際開いたら怖い。
休日だけあって人はいる。入れ変わり立ち変わりって奴だな。時折店に入らないでじっと見つめる私を変な目で見る人がいるが……私も変だと思うので怒ったりはしない。弥生さんは意外と寛容なのだ。
しばしじっと見つめる。完璧に変人じゃないか。営業妨害といわれたら……買うから許してもらおう。
というかさ、今気づいたんだけどさ。
寒い。
じっとしていたら寒いので、辺りを見回ることにした。風もないので走ってみた。耳が冷たくなった。帽子は被っているが、耳まで守ってはくれない仕様です。おのれ図ったな!! 寸法をな!
脳内で一人ボケつっこみを繰り広げつつ、徘徊。なあに、十分もしたら立派な迷子さ。そのような事態に陥らないように常に住所を確認しておいた。それに弥生さんのケータイはGPSが着いているので、常に衛星から狙われているのだ! なんという重要人物なんだろう! SPをつけたまえ!! よし、将来はそういう偉い人になろう。中学校の生徒会長はその第一歩だ!! のちの歴史書に載るので、ちゃんとノートにとっておくように。
すったらことをやっていると時間に近づいてきた。私ってば時間潰しの天才だね。アインシュタインを破壊したものとでも呼んでくれ。冗談だ。
目的地に向かって走る。寒いけど、暖かくなるからだ。
しかし失敗した。手袋をもってくればよかった。したらせめて手だけは寒い思いをせずにすんだのに。
前方に翔くん発見! 相変わらずほややーんとして可愛い。持って帰りたい。
「しょおおおおおおおおくーーーーーーーーん!!」
大きく手を振って大声上げて自己アピール。就職活動では必須です。
私は皐月に駆け寄るリュックよろしく翔くんの元へと駆け出した。
「翔くん翔くん翔くん!」
大声で呼ばれたので翔くんは驚いています。ごめんよ、そんなつもりはなかったんだ。
「早く着ちゃったからケーキ屋さんを見てきちゃったよ!」
「下見ですね」
自分の行動を思い出した。いや、あれは下見という生易しいものではなかった!
「いやあ! ガン見だね!」
これが大正解だと思う。
「じゃあすぐに行きますか?」
苦笑して気を使ってくれる。将来は良い紳士になりそうだ。
「ううん、服を見たかったんだけど、……いい?」
……よく考えたら一人で見に行けばよかった。ケーキで頭が埋め尽くされるとこんなことも思いつかない。
「それじゃあ行きましょう。えっと、どっちですか?」
私の顔がぱあっと明るくなった。鏡で確認したいくらいだ。
「こっちだよー」
私はにっこにこの極上の笑顔で翔くんの手を取った。
暖かい。
「翔くんの手は暖かいね」
素直な感想。それに翔くんが握り返して応えてくれる。
なんか嬉しいよ。なんでだろうね?
「このまま歩いていい?」
翔くんと合流したのならば、もうこっちのものだ。全力でケーキ屋に向かうしかない。
しかし翔くんの手前、先輩風を出しつついつも通り世間話をしなくてはないらない。理由は特にない。
だが。
ケーキである。
ケーキの前に私のプライドなんて些末なことじゃないか。理由はプライドとここで判明した。
大体空腹である。……しまった、これでは舌に迷いが出るじゃないか! 満腹よりはいいかとすぐさま納得する。
そんなことを考えていたら私はひたすら無言で翔くんの手を引き、大またで歩いていた。競歩みたいだ。陸上好きの翔くんだからきっと問題ない。
ケーキ屋に到着。私はドアを開き突入。遅れて翔くんも来る。
ケーキ発見! ケーキ発見! ケーキ発見! ケーキ発見! ケーキ発見! ケーキ発見!
魂のエマージェンシーコールが鳴り響く。別に緊急事態じゃない。
さあどれを食らうどれを食らう!!
私はこれ以上ないほど真剣な目でケーキを見つめた。
ショートケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ、モンブラン、チョコレートケーキ、レアチーズケーキ、プリンにシュークリーム……だと……!? アップルパイにシフォンケーキもある。
「うう……」
どれにしよう。
お金は有限なので買える数には限度がございます。値段を見て腰を抜かしかける。ショートケーキで三百十円だと!? お財布クラッシャーじゃないか!! しかし、高い分おいしそうです!!
どうしよう。そんなにお金持ってきてないよ。三千円くらいは持ってるけど……そんなに全部使いたくないよう。使ったらお母さんに怒られる。千五百円までだな。これでも怒られそう。でも食べたい。一個三百円と考えて、四つで千二百円。妥当か? 妥当か? 再度検討。
だめだ。ケーキだけで千円越えたら怒られる。お母さんも食べたいって怒られる。今度連れて行くから勘弁しておくれ、そういう問題じゃない。となると三つになるか。三つか。平和的な数字だ。何より素数だしね。よし、三つ。
さて、どれを食らうか。ケーキを見つめる目に力が入った。
まずシュークリームは絶対に食べる。大好きだからだ。中身は生クリームがいいけどたぶんカスタードだろう。ちくしょう。
んでベタにショートケーキ。あとプリン。プリン。プリンの歌が頭の中で流れる。よしプリン。
チーズケーキも食べたい。レアも好きだ。
あれ?
五つ選んでるね。
二つ切るのか……。じゃあレアチーズケーキは諦めよう。涙を呑んで諦めよう。いや、今度にしよう。他の友達と行こう。というかまた翔くんときたらいいんだ!! 私やっぱり天才だわ。
思い出したように翔くんを見た。
いつもの心癒す顔でケーキを眺めていた。
うん。
さて、ショートケーキにチーズケーキ。プリンとシュークリーム。
この中で一つ切れと言うのか貴様は!!
泣きそうになった。
「……うう……うう……」
どれも私が食べるために生まれてきたんじゃないか……!! それなのに諦めるだなんて理不尽にも限度がある!!
「いくつ食べるつもりですか?」
翔くんの声に私の理不尽が少し落ち着く。
「胃の容量は別腹なので問題なし、経済的にもは三つが限度で、四つまで絞り込みました。ショートケーキとチーズケーキとプリンとシュークリーム」
四つそれぞれに熱い視線を送った。
「ならぼくがチーズケーキを頼みますから、半分こしましょう」
私は光速で翔くんを見た。
翔くんは光り輝く天使のように微笑んでいた。翔くん……マジで天使だったのか……。でも天使って裸だから軽いセクハラだよね。軽い? 重いわ……。
「い、いいの!?」
「はい、だからそれぞれ一口ください」
「交渉成立だよ!」
抱きつくのを堪え、翔くんの手を取ってぶんぶんと振り回した。
ケーキ購入、食べていくことを伝え、店員のお姉さんにテーブルまで運んでもらう。お茶も売っているそうだが、丁重に「舌に迷いが出ますので!!」と断った。笑ってたよお姉さん。だが私は真面目だ!!
ショートケーキとプリンとチョコレートケーキとモンブランが小さなテーブルに並んでいる。私は今ある輝石(誤字ではない)に感謝するように指を組んだ。ありがとう翔くん! ありがとう翔くん! もっかいサービスだ! ありがとう翔くん!!
「ありがとう翔くん!!」
「はい? ああ、半分このことですね。いいんですよ」
ほわほわと微笑む翔くん、やはり持って帰りたい。しかし持って帰ったら洋子に見られるので何か嫌だ。しかし洋子は基本キョンくん以外の男にはキョーミないので問題あるまい。問題だろう……なんかそれやばくねえええええええええ…………!!
とかなんとか考えている場合ではない。
「じゃあ、食べようか♪」
気を取り直してショートケーキにフォークを突き刺した。迷うことなく口へ運ぶ。
!!
……おいしい。
「おいしいよう」
にへらあと笑うと私は一瞬で頭の中に埋め尽くされた言葉を口にした。
すると翔くんが不服そうに口を尖らせた。
「やよ先輩、一口ください。約束です」
ヤクソク? ああ、覚えてますとも、ミッション半分こだね!
「ごめんごめん」
私はショートケーキを切ってフォークに乗せた。
「はい、あーん」
「あーん」
あーんと言われたら、あーんと言って口を開けなくてはいけないという常識は、世界に浸透して三万年になる。
もきゅもきゅと食べる翔くんが可愛くてやはり持って帰りたい。
「うん、おいしいです」
「でしょ〜?」
我が舌に、迷いなどなし!! さっきは迷いっぱなしだった気もしないけどね!
翔くんは何か言いたそうに口をちょっとだけ開いて、食事に集中することにした。チョコレートケーキを小さく切って一口。
笑顔。
卑怯だ。
「ん、これもおいしいです」
なんという眩しい笑顔! 吸血鬼もイチコロだ!
「本当?」
翔くんは私がそうしたように、チョコレートを一口分フォークに乗せて私に差し出した。
「あーん」
「あーん」
あーんと言われたら、あーんと言って口を開けなくてはいけないという法律は、地球創世記にさかのぼるという。
「んーこれもおいしい!」
私の言葉に翔くんは嬉しそうに微笑んだ。
このペースで私たちはケーキを食べた。すっごいおいしかった。もともとおいしいのもあると思うけど、やっぱ一緒に食べる相手が翔くんってのも大きいよね。
これ洋子だったらそんなにおいしくないと思う。あいつは食べ物なんてエネルギー補給とかしか思ってないからね!! けどフルーツ白玉の白玉をいつも私にくれないんだ! 知っているかい!? こういうのを嫌がらせって言うんだ! バカヤロー!!
翔くんと別れて家路に着く。
一応きょろきょろと周囲を見てみるが、洋子もキョンくんもいない。ま、そうだわさね。
ケーキの味を思い出しにまにまして、翔くんともっといたかったなあとしゅんとする。忙しいな私。
楽しいんだか、悲しいんだか、よく判らん気持ちでおうちに到着。
玄関で靴を脱いでいる最中にリュックからタックルを食らう。安心していい。リュックは家族の誰にでもお出迎えの歓迎をしてくれるのだ。私は皐月と一緒に最近遊ぶようになったので、歓迎度が高い。タックルのち顔面べろべろの刑くらいが日常だ。……学校帰ってきてもこれなんだぜ、疲れないのかな。
皐月が帰ってきたときは大変である。弾丸ライナーのように皐月に激突、顔べろべろして、しまくって、呼吸困難を起こす。大丈夫だろうか、この犬。お母さんに対してもそうである。なんだかんだいってお母さんが世話しているからね。あ、皐月もお世話してるけど、ほら、子供だからどうしてもってとこがあるじゃないですか。
夕食。帰ってきたお父さんを入れて四人で食らう。リュックが箸から落ちる食べ物を狙っているので、食事中でも緊張が走る。食べ物は床には置かない。まあ、うちは足の長いテーブルにイスなので置くことはないけど。
けど、ミスを犯して食べ物を落としてしまうときがある。そのときのリュックの素早さは音速を超えていると思う。何故犬はこうも飢えているのだろうか。ちょっと待ってほしい、リュックは我が家に来たときは手渡しでないと食べないほど食が細かったじゃないか! なんだこの変わりようは!! 可愛いから許す!!
お食事時に今日の成果を私が率先して報告する。次はお父さん。私もお父さんも今日の報告をお母さんにしなくてはいけないという宿命を持っている。ちなみにお母さんは人が話をしてすっきりしてるのを見てすっきりするという訳の判らん人だ。互いに役に立っているからいいだろう。
「どうしてその後輩くんとケーキ屋にいったの?」
お母さんが私に聞いてくる。なんとなく照れくさいので家族には翔くんの名前は教えていないのだ。ただ、可愛い後輩くんがいるのだ! と自慢している。
「はて……?」
私は箸でから揚げをつまみ、それを凝視する。
何故私は翔くんと楽しげにケーキを食らったのだろうか? 簡単だ、そこにケーキがあったからだ!
違う。何か違う。こう、ベクトルを間違えている感がびんびんする。
そもそも何故ケーキ屋に行ったのか? あれだ、翔くんと行く約束をしたからだ。何故そのような約束を? それは翔くんがおいしいケーキをバイト代で買って、ご両親を喜ばせるためだ。
おお、これじゃん!
「後輩くんのね、バイト代でね、ご両親においしいものをご馳走するってわけさ」
おいしいものという言葉にリュックが反応して、私の足元へとやってきて期待に目を輝かせていた。だれだ、こんな言葉教えたの。
「へえ、そんなにおいしいなら今度買ってきてよ」
まあそうなるわな。お父さんは私を見ながらそういう。私は笑顔で手を出した。
「はいはい。四人で一人二つだから……」
「わたしはおっきいのがいい!」
皐月が元気よく手を上げた。可愛い。おっと、ごはんが落ちました、リュックが光速でそれを拾い食らう!!
「あー……」
やってしまったという顔をした皐月に心優しいお姉ちゃんはフォローを入れる。
「大丈夫、あのご飯はリュックの胃袋で天命を全うする運命だったのだ」
お父さん、お母さんの二人からそれはフォローの仕方を間違えていると指摘された。なにを言うか。
愉快に食事を終え、お父さんに呼ばれた。五千円札を渡されて「明日ケーキ買ってきて」と言われた。全力で引き受けた。皐月も連れて行こうか。リュックが寂しがるな。どうしよう。ちなみに明日は日曜日だぞ。お母さんはパートで、お父さんは出かけなくちゃいけない用事があるらしい。友達に呼ばれたんだって。
まあいい。
私は夕食の片づけをしてから自室に戻った。
「ぬう」
お風呂も入ったし、宿題なんてとち狂ったものはない。ならば寝るだけか。
ほいじゃ寝る前に翔くんにメールしとこう。家族の反応が気になるですよ! 喜んでくれるといいな。あと、また一緒に食べに行こうねってお誘いしよう。
ぽちぽちとメールを打って、送信。
私はベッドにダイブして、そのまま眠りについた。
翌朝、皐月とリュックに起こされる。時計を見たら十一時だった。よい子はとっくの前に起きている時間ではないか! 私はパジャマ姿のままカーテンを開け、隣の洋子の部屋を見た。カーテンがかかっていた。
寝ていやがる!! よし、通常営業だ!!
私は着替えると遅めの朝食をとった。
その後に皐月に何故私を起こしたのかを聞き、ケーキ屋に行くの! と力強くリュックのリードを持ちながら言った。散歩がてらにケーキを買うとは、さすがマイシスター、洒落込んでますな。というか、リード持ってるもんだからリュックの目が尋常じゃないほど輝いているよ。これはさっさと支度せねばなるまい。
ケータイを確認。何もなし。
あれ、翔くんお返事はまだかい? もしかして届いてないとか? 送信履歴を一応見てみる。うん、送られている。忙しいのかな?
その後、皐月とリュックと昨日のケーキ屋に行った。当然犬は店内には入れないので、近くの柵にリードをつないでおく。置いていくのか!! というリュックの心の悲鳴が、実際きゃんきゃん!! と心に響く声で鳴かれて困った。
てきとーにケーキを選んで購入、店を出る。リュックのお出迎えは皐月にのみだ。二人と一匹仲良く歩いて帰った。
そんな風にてきとーに休日を潰した。
翔くんからのお返事メールは来なかった。
月曜は憂鬱である。だが、翔くんに会えるので問題ない! そうだろう!? 誰に同意を求めているのだろうか!
全力で朝食を食らい、登校。いつも通り洋子とキョンくんと三人で歩く。どうでもいいような話をして、洋子の怒りを買ってカバンで殴られる。足をだして引っ掛けて転ばした。洋子から右ストレートを食らった。コンバットキックを放とうと身構えたところでキョンくんに止められた。もうちょっと早く止めてもらっても構わなかった。
学校敷地内に入ったら翔くんの後姿を見つけた! 私は二人を置いて走り出した。
「しょうくん♪」
声をかけつつ背中をぽんと叩いた。
「おはよう」
「――おはようございます」
一瞬、翔くんの顔が何かを堪えるように強張った。どうしたんだろう? だが、細かいことを気にしないことで有名な弥生さんは構わず疑問をぶつけます。
「この前はどうだった? メール送ったんだけど気づかなかった?」
「あ、え、っと。メールは見ました。ごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げる翔くん。
「ううん、いいよいいよ気にしないで。で、どだった? 喜んでくれた?」
おばちゃんが聞きたいのは結果だよ!!
「はい。とても喜んでくれました」
満足行く結果に私の身体に喜びが広がった。やったね! いやっほう! って叫んでジャンプしたい。
けど、それをする前に翔くんは言葉を続けた。
「お父さんが海外に行くことになりました」
海外ですと?
翔くんが説明してくれます。
翔くんのお父さんが勤めている会社の、新しく出来る支店に、翔くんのお父さんが責任者として現地に向かうことになったそうです。
つまり、あれだ。
「左遷だね!」
「栄転です」
泣きそうな顔で翔くんは微笑んだ。
「場所は、コアラのいないオーストリアです」
コアラが絶滅したという話は聞いていない。おーすとらりあ? ……おーすとりあ? オーストリア! イエス! イエス!! 知ってる知ってる、たぶんヨーロッパ。
「…………オーストラリアとオーストリアの区別くらい出来るよ。えーと、ヨーロッパのほう」
地理は苦手です。
「お母さんも一緒に行きます」
「うん」
お父さんはさみしんぼってより、一人だと不安かもね。お母さんのサポートは必要かもだ。
「ぼくも一緒に行きます」
――頭が真っ白になった。
「うん」
真っ白な頭では何も考えられなくてただ頷くしか出来ない。
「だから、転校です」
翔くんの声が、沈んで、暗くなっていた。
「うん」
私はまた頷いた。ただただ翔くんの言葉に頷くだけだった。
「うん」
何も言わない翔くんに、私は頷いた。
いつの間にか歩みを止めていた足を見つめた。
――だから、転校です。
真っ白な頭に翔くんの言葉が虚しく響く。
どういう意味なのか、考える。同時にのろのろと歩き出す。
転校ってことは、この学校からいなくなるってことだ。もうここにきても翔くんに会えなくなるってことだ。
胸が苦しくなった。
目の奥が熱くなって、鼻がつーんとした。
そのまま玄関に入って別れる直前にやっと私は口を開いた。
「びっくりして、何て言って良いか判んない。だからちゃんと考えてから言うね」
それが精一杯だった。
翔くんが転校する。翔くんに会えなくなる。
その事実が頭の中をぐるぐると回る。
友達に朝の挨拶をされたけど、うまく返せない。返さなくていい。今それどころじゃない。
翔くんに会えなくなるって、どういうことだろう。
一緒に部活巡り出来なくなるんだ。最近行ってないけど。
生徒会室で駄弁ったり出来なくなるんだ。
一緒にケーキを食べに行けなくなるんだ。
ふらっと外に出てたまたま偶然会うこともなくなるんだ。
一緒に、いられなくなるんだ。
でも、それは翔くんと出会う前に戻るということと同じだ。
状況は同じ。
でも、私の心は違う。
一緒に過ごして、楽しくて、心地よいと思った時間は、ちゃんとしっかり、残っているよ。
行ってほしくない。
けど、そんなこと言ったら翔くん困る。翔くんだって残りたかったぽいのに。私が引き止めたら、翔くんの決意を揺るがすことになる。
翔くんのお父さんの、邪魔をすることになる。家族を引き裂くことになる。
そんなこと、絶対にしてはいけない。
じゃあ、諦めるの?
「なら、諦めるの?」
まるで私の考えを読んだかのようなタイミングで洋子は言った。隣の席で、ノートを取っている。あ、今授業中なんだ。突然の言葉に周囲のクラスメイトが驚いている。
一緒にいたいけど、翔くんの都合を無視してまで一緒にいたくない。でも、翔くんに会えなくなるのは嫌だ。
「望みは出た。なら、出来る方法を考えなさい」
遠くにいる翔くんと会う方法。
私も一緒に行く。却下。すべてにおいて無理。留学という手段もあるが時間が掛かりすぎる。
長期休暇を利用して会いに行く。現実的。お金は翔くんと同じく新聞配達すればいい。親の許可は頑張る。なんとかなる。してみせる。邪魔なんてさせない。
これだけじゃ足りない。
携帯電話のメール機能。国際電話。お手紙。
「エアメール」
それだ。
あと、テレビ電話。インターネットを使えばなんとかなるかもしれない。うちのパソコンはお父さんのだから、自分の買おう。お年玉貯金は下ろした覚えがないからきっとそこそこあるはず。
チャイムが鳴った。時計を見たら給食時間だった。私は長時間考え事に没頭していたみたい。
昼休みにキョンくんのところに突撃する。キョンくんはパソコンに詳しいのだ。
「キョンくんキョンくん! インターネットでテレビ電話できるの?」
「そのようなサービスを受けるには双方にウェブカメラとマイクが必要である」
「いわゆるソウホウコウという奴だね!」
「大正解だ」
「相場はおいくらでしょうか!」
「ピンキリ」
ぬう。
でも、翔くんにもカメラとマイクを用意してもらえれば顔を見てお話しすることが出来る!
目の前がぱあっと明るくなった。
早速翔くんに会いに行こうと思ったら昼休みが終わった。この野郎と拳を震わせ大人しく授業を受ける。数学で、先生に当てられて前に出され、黒板に書かれた問題を解けといわれた。式を見て答えだけ書いたら「途中計算も書け」と言われた。なんとなくこれかな? って答えを書くと結構当たる弥生さんです。
あっているのならば問題ないじゃないかと返したら「途中計算が大事なんだ」といわれた。そんな嫌いな先生じゃないので、真面目に計算した。導き出された答えは間違っていた。愕然とした数学の先生の表情が忘れられない。
次の時間は何と体育。会いに行く時間がないじゃないか!! 誰だ時間割考えた奴!
バスケだったので、ボールに怒りを込めた。パスを受け取って、ゴールに向かって全力で投げた。ごがががががん! とゴールが愉快な音を立てた。すっきりしない。
授業が終わって帰りのHR。余計なことを言うんじゃねえ……!! という熱い視線を担任に送ったところ華麗にスルーされた。でもいつも通りのHRだったので問題ない。
私は教室を出た。たぶん掃除当番ではないので問題ない。
翔くんのクラスへ向かう。帰りの時間だけあって人がたくさんいる。ふざけんな。廊下は走っちゃいけないので早足で歩く。
到着! 教室を覗いてみると絶賛掃除中。その中に翔くんはいない。なんてこったい。
その中に翔くんのお友達と名乗る少年が、翔くんはさっさと帰ったと教えてくれた。なんという……! でも出たばっかりだから間に合うかも。とも言ってくれた。そうしてケータイを取り出し翔くんを呼んでくれている。なんといういい少年なんだろう。今度お礼に鼈甲飴をあげよう。科学部に突撃せねば。
そして私は「間に合うかも」と言う言葉を信じて玄関に向かった。
玄関は人がたくさんいた。こっから一年生の靴箱まで行かなくちゃ! 私は人と人の間を強引にすり抜ける。嫌な顔をされるが気にしない。
翔くんはどこだ! 翔くんはどこだ!
一生懸命首と視線を動かして探す。
みんな好き勝手にしゃべってるから、ざわざわしている。
翔くん見えない。もう帰っちゃったかな。
でも諦めない。
誰が諦めるか。
そう強く思って正面を見たら、翔くんがいた。
翔くんがいた。
翔くんがいた!
「しょーーーーーーーーーーーーーくん!!」
私の大声に周囲の人はおろか、玄関全体が静かになった。びっくりしたんだろう。そんなことはどうでもいい。
翔くんがいる。
ケータイ片手に私を見て、驚いている。
「翔くん翔くん翔くん翔くん翔くん!!」
人を掻き分け前に進む。
「翔くん!!」
やっとめっけた!
「やよ先輩!」
「やった、翔くん!」
逃がしてなるものかと私は翔くんの片手を両手で握った。相変わらず翔くんの手は暖かい。
「翔くんのクラスに行ったらもう帰ったって言うから慌てて追いかけてきたんだよ」
それはもう全力で。
「え、そうだったんですか。すみません」
「んでね、その電話は翔くんの友達が気を利かせてかけてくれたんだよ」
「そうですか」
そう言って翔くんはケータイをいじり、バイブレーションが止まった。切ったんだ……。何気に酷い。でもそれどころではない。
「あのねあのね!」
もうちょっと強く握る。
「あのね! 今度のお小遣いでカメラ買うから! でね、マイクも買う! そんでパソコンも使えるようになるから!」
「はい?」
「うん、あのね、カメラとマイクをパソコンにつなげたら、テレビ電話みたいに出来るんだよ」
きょとんとしている翔くんに、キョンくんから教えてもらったことを伝える。軽く頷くと納得してくれた。
「だからね、翔くんがオーストラリアに行っても、時間を合わせればお話できるよ」
「オーストリアです」
そうだっけ?
「うん、そうそうそうそう! オーストリア。でね」
一応訂正しておこう。
「手紙も書くし、電話もするよ! でもメールが一番お手軽だね!」
「そうですね。メールが一番安いです」
「でも手紙って貰うと嬉しいよ!」
「じゃあぼくもやよ先輩に手紙書きます」
「うん!」
うなずき合った。もうこれで目的は果たしたようなものだ。
「ところでこれは何の話ですか?」
だが肝心の翔くんがさっぱり判っていなかった。何故だ。何故この私のナイスな説明で理解出来ないんだ! ……もしかして翔くん、天然? そんな馬鹿な……!
「翔くんが、オーストリアに行っても寂しくならないようにする話!」
翔くんが息を呑んだ。思ってもいなかったことを言われた、そんな顔をしている。
すごくびっくりして、私を見ている。
「でもね、いつかきっと必ず!」
――そう、絶対に。
「手紙でも、メールでも、電話でも、テレビ電話でも、それでも足りなくて、寂しくて寂しくてしょーがなくなるときがくるから!」
――絶対に、そんな日が来るから。
――だから、
「そのときがきたら、私、翔くんに会いに行くから!!」
口に出したら、本当に出来るかなとかお父さんもお母さんも納得してくれるかなとかそういう色々な不安が消し飛んだ。
不安の代わりに心の中に、絶対に会いに行ってやるという固い誓いというか決心というか、何かが生まれた。
――私は絶対に翔くんに会いに行く。
「で、でもオーストリアは遠いし、飛行機代だって高いから、そんな」
翔くんから出た言葉は真っ当なことだった。当然だ。だって私らまだ中学生だ! 私の言ってることちょっと難しいよ!
でも出来ないって訳じゃないよ!!
「大丈夫!!」
力いっぱい太鼓判を押してやるように、私は胸をどんと叩いた。むせた。というか痛い。
「誰かをね、大好きって思う気持ちはね、無敵なんだよ!
空だって飛べる、海だって越えられる!
私は翔くんのことが大好きだから。だから、会いに行くよ!
私は翔くんに会いに行く。
翔くん、君に会いに行く!!」
翔くんの不安を吹き飛ばすように力強く宣言した。
私も言ってびっくりした。
そうか、私翔くんのことが大好きだったのか! なんとなく知ってたけど、こう改めて自覚すると嬉しいね。数字で表すと0.999999999以下省略皐月くらいだ! おおう、これは洋子やキョン君たちと並ぶ私の好き好きランキング堂々の同率二位じゃないか!!
そりゃ大好きだ!!
私が自分の気持ちに納得して翔くんを改めて見た。
いっつも私の心を癒してくれる、ぽやぽやしている表情が、驚きで埋め尽くされている。そーかそーか、驚いたか。私も驚いたからオアイコだ。
驚いて何もいえない翔くんの目が、赤くなっていって、泣きそうな表情になる。
目に、涙が浮かんで来ている。
あれ?
あれ?
私もなんか、鼻がつーんとして、目が熱くって、胸が苦しくなる。
いかんいかん、私は先輩、そしてこの学校で一番偉い生徒会長。もっと堂々と胸を張っていなくていけない。
我慢我慢。
ほら、何か言わなくちゃ。翔くんに言わなくちゃ。
だから安心して、行ってこいって。
言わなくちゃ。
「――うう……」
それなのに私の口から出たのはみっともない声だった。
すぐに頬に熱いものがつーっと流れ落ちた。
それが何かなんて確認するまでもなかった。
握り締めた翔くんの手を見る。気が付けば翔くんは私の手を握り返してくれていた。すごくすごく暖かかった。
手が。
何より心が。
それを自覚して、心の奥底で何かがはじけた。
先輩としての立場とか、生徒会長がどーのこーのとか、そんなことよりも、もっとずっと大事なことがある。
それは……
それは――
「そんなこと言ったってやっぱり翔くん遠くに行くのやだあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
私の、本当の気持ち、だ――!!!!
慣れない我慢なんてするもんじゃない。私はただ翔くんがいなくなるのが嫌で泣き叫んだ。
翔くんの、暖かい手を握り締めて。
嫌なもんは嫌だ。
翔くんがいなくなるのは嫌だ。
学校で、たまにぽっと出た外で、約束して映画館やケーキ屋で、また翔くんに会いたい。
だって好きだもん。大好きだもん。
会えないなんて嫌だよ。
もっともらしく翔くんの転校に納得して、連絡手段を確立させたって、やっぱり翔くんがそばにいてほしいよ。
翔くんの都合を無視してまで一緒にいたくないなんて嘘だ。
一緒にいたい。遠くになんて行ってほしくない。
「ぼくも遠くに行きたくないです。やよ先輩と離れるのは嫌です」
翔くんの手が私の手を包み込んだ。
「もっともっと、一緒にいたいです」
翔くんの声は震えていた。
翔くんは泣いていた。
泣いて、行きたくないって、一緒にいたいって言ってくれた。
嬉しくて悲しくて、なんだかもう訳が判らない。
そんな気持ちを抱え、私たちはお互いの手をぎゅううっと握り締めながら泣き続けた。
現実は甘くない。いくら私と翔くんが一生懸命駄々こねたって翔くんが転校するという事実は覆せないのだ。この野郎と思うが仕方ないのだ。弥生さんは駄々っ子だが、そこそこ物分りがいいのだ。
だから私と翔くんは時間を作っていっぱい遊んだ。ついでに生徒会の仕事もした。今この時期に仕事(年度末にいつも生徒会の冊子を作っている)を寄越すとか狂ってやがる。まあいい、これも翔くんとの共同作業だ。
「はいはい、らぶらぶですね」
と色んな人に言われるが、ちょっとよく判らない。そら翔くんのことは大好きだけどさ、そういうのじゃない気がする。大体私は異性ならばキョンくんも大好きなんだぞ。
「幼馴染と急にぽっと出てきた他人はどえらい違うと思う」
キョンくんがそういうが、私の中ではさほど変わらない。
「さほど、ね」
洋子が鼻を鳴らした。
「いつかその差が理解できる日が来るでしょう」
続けて洋子はまた笑った。面白そうに、くすくすって。
「鳴海翔太はちゃんと一番なのに、弥生の一番はずっと変わらず皐月なのよね」
「? 当たり前じゃん」
洋子は楽しそうに笑った。
「可哀想ね」
意味が判らなかった。きょとんとしてたら、キョンくんが軽く洋子の頭を叩いていた。
よく判らない。
バイトはどうしようかと思っていたら翔くんが自分が勤めている新聞配達を勧めくれた。そうか、翔くん辞めるから代わりの人が必要なんだ。私は喜んでそれを受けた。しかし私と翔くんのおうちはそこそこ離れているのだ。担当地区違うんじゃないかなと思っていたら、翔くんのほかにも辞める人がいて、その人の担当地区が私の近所だったので問題なかった。何このグッドタイミング。誰かが裏で糸を引いているんじゃなかろうか。なでてあげるから出てきなさい。
一生懸命二人の思い出を作っていたら、当然のように旅立ちの日がやってきた。
直前になって、やっぱやだって翔くんを攫いたくなるかなと思ったけど、そんな気持ちにはならず、むしろ晴れ晴れとした気持ちでこの日を迎えられた。私も成長したもんだ。褒めていいぞ。
空港へお見送りに行く。
翔くんはお友達と話している。たくさんの友達に囲まれている。幸せ者め。
話が一段楽したところで、翔くんは押されるように私のところへとやってきた。押した相手を見ると、それは翔くんと仲の良い男子だった。翔くんが転校するって教えてくれた日に、翔くんを探していた私に居場所を教えてくれた彼だ。
ありがとって意味を込めて笑顔を向けた。片手を上げて返される。なんというクールな対応。感動した。
「行ってきます」
ふわりと翔くんは微笑んだ。私も笑顔を返す。
「うん、行ってらっしゃい」
翔くんが私に右手を差し出した。あくしゅ。
翔くんの暖かい手をきゅうっと握り締める。
「長いお休み入ったら会いに行くね」
「はい。ぼくもやよ先輩に会いに帰ってきます」
――帰ってくる。
そだね、翔くんの居場所はこっちだよね。
「すれ違わないようにちゃんと連絡しようね」
大事なことだった。
「約束」
だから私は手を離して、小指を立てた。
「指きり」
翔くんが私の小指に絡めてくれる。なんかくすぐったい気分。
「ゆびきりげんまん、うそついたら、はりせんぼん、のます♪」
二人で歌う。
「ゆびきった!」
翔くんは私と友達に手を振って、ご両親の元へと行った。
行ってしまったか。
寂しいな。
でもま、約束したからちゃんとまた会える。
うん、大丈夫。
なら、寂しくないよね。
翔くんが振り返ってこっちを見た。私は大きく手を振った。
声に出さず、口を動かす。
――いってらっしゃい!
ふと、気づく。
寂しくない。
強がりでもなんでもなく。
全然寂しくない。
だからこれはお別れじゃない。
そう結論付けたらなんか嬉しくなった。すごく力が湧いてくる。
ふっふっふっふ、翔くん待っておれ。次に会うときはニューやよ先輩となってきみを楽しませるぞ。
具体的に何をするかだが……。
まずバイトのために早くに起きるのに慣れること。それと長いお休みごとに外国へ行くということを親に認めてもらうことか。前者はともかく、後者はちょっと……ユーウツ。最悪の場合ころしてでもうばいとるだよね。意味が違うけど、ニュアンスは似てるので問題ない。
あ、その前に手紙を送ろう。住所が判らん。まずはメールして住所教えてもらおう。
そんで手紙のネタ探しだな。面白いことを書かないと失礼だからね。今後は懐にメモ帳を忍ばせておこう。
学年も上がってまた学校イベントで生徒会が忙しくなるな。今までと同じじゃまずいかも。
ん? よく考えたらやることがたくさんあるな。困った。寂しさを感じる所ではないじゃないか。
そのほうがいいのか? んー、私が落ち込んでたら翔くんも嫌だよね、ならいいや。
よし、落ち込んでないぜ! 元気だぜ! って感じの、必要以上に楽しみになるような手紙を送ろう。インターネットテレビ電話もするけどね。手紙は手紙で醍醐味があるのだよ。
大忙しじゃないか。
だからきっと、夏休みとか長いお休みに入るのなんてあっという間だね!!